2011/09/04

アマニタ・パンセリナ

「アマニタ・パンセリナ」
著者 中島らも

学生時代、サラリーマン時代のダラダラ具合とイカレ具合は
エッセイや小説のネタになってて
その滅茶苦茶な生活ぶりを読むと
灘高から、大阪芸大、サラリーマン、フーテン
酒量もクスリもどんどん増えていって、本人もどんどん壊れていって
繊細なお利口さんは、困ったもんやな〜と思う
物書きとなって自由度が増してからの、
薬物依存、アルコール依存、激しい躁うつなどは
入院しようが、オカシナ色のオシッコが出ようがまったく改善されず
晩年はますますの壊れっぷりを発揮、そして2004年
酩酊状態で階段から落ちて全身打撲、脳挫傷、
そのまま意識が戻らず52歳で死亡


中島らもの作品として紹介するなら
彼の代表作と言ってもいい長編小説「ガダラの豚」を紹介すべきなんだろう
(アフリカのブラックマジックやら、呪いやら、超能力少年やら豪華な出演者)
だけどここは、あえて「アマニタ・パンセリナ」
















タイトルのアマニタ・パンセリナはディズニーのアニメとかで
森の中の描写に出てくる真っ赤なカサに白い斑点のテングダケの学名
そう、毒きのこ

全編、ドラッグに関するエッセイだ

某雑誌を見て
南米かどこかの奇祭のルポで、男たちがたき火のまわりで
ガマガエルを口にくわえて踊ってる姿に、なぜか納得するらもさん
どうやら
「幻覚性のアルカロイドはほとんど植物から採られる
動物性のものとしてはガマガエルに含まれるくらいである」
という記述を読み、「ガマなめ」が気にかかってたようだ
ガマガエルの毒の成分のひとつは幻覚作用を起こすらしい
ガマをなめてトリップできる事を確信し
ガマの事は一応納得したように書いている

そして
アマニタパンセリナに含まれる幻覚を起こす成分ムシモールが
合成されて殺虫剤に使われていると知れば
「殺虫剤を吸う人」さえいる事に

ガマをなめ、殺虫剤をかぎ、毒キノコを喰らい
都市ガスやフレオン、硝酸アミル、ブタンを吸う連中に
「どこへ行こうというのか」
と問いかけるところからこのエッセイははじまる

目次は
睡眠薬、シャブ、アヘン、幻覚サボテン、咳止めシロップ、毒キノコ
有機溶剤、ハシシュ、大麻、LSD、抗うつ剤、アルコール

そういえば、サーフィンも、マラソンも、極めてくると
何らかの快感物質が自分の身体の中で生み出されて
一種の中毒に近い状態になるようだ
極めた最後に、自分自身の中に生まれるもの
それは「快楽」という名だったり
「悟り」という名だったり
「万能感」という名だったり

きっと、何らかの成分が身体の中に生まれて
それが作用してそんな「気持ち」を生み出すんだろう

もし、身体を酷使して極めなくても
ある種の「クスリ」でそんな「快楽」「悟り」「万能感」が得られるなら
そりゃあ、試してみたくなるのかもしれない

この本の中でも、らもさんは故・澁澤龍彦さんが
「滝で打たれて十年で得られる感覚が、ドラッグによって得られるなら
それはまったく同じ事なのであってドラッグをどうこういういう筋ではない」
といった旨で書かれた文章に多いに賛成し
鍼の先生に
「脳内麻薬のエルドフィンを鍼で増加させるツボはないのか?」
と聞いてたりする
その先生の答えが面白い
「苦痛になるツボを刺激し続けると、
つらいのを緩和するためにエルドフィンが出てくる」
う〜ん
この鍼の先生タダモノではないなあ!

だけど、そんな「クスリ」でお手軽に
「快楽」「悟り」「万能感」なんてものを手に入れたら
身体も心も、取り返しのつかないエラい事になってしまう事も
ちゃんと書かれてるから、そこをしっかり読んでね!

そして最後の章は
「ラストドラッグ アルコール」となっている
らもさんは、アルコール中毒とうつ病での入院のあとの
この本の最後の一行に
「酒はいいやつである、酒自体に罪は一切ない、
付き合い方を間違うと僕のようになってしまうのだ
僕はもう飲もうとは思わない
あの奇妙なプールであがくのは二度とご免だからだ」
と完全な断酒を宣言していた

だけど、
だけど、
死因を見ると結局はやめる事は出来なかったようだ

自戒の念をこめて記しておこおっと!

0 件のコメント:

コメントを投稿